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LINEN渡辺諄子のFF4(ゴルカイ)妄想
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青き星へ向かって進む魔導船の中で、ゴルベーザは夢を見ていた。

ゼムスの悪意に操られていた頃の自分がセシルと戦っている。
走馬灯のように目まぐるしく過去の記憶が目の前に広がっては消えた。

金色の髪の竜騎士を初めて見た時のことが脳裡に浮かぶ。
目の前の生き物のあまりの美しさに心が震えた。竜を象った兜から覗く素顔、青い甲冑、しなやかな身体つき。
一目見た瞬間から魂を奪われ、しばらくの間視線を外すことができなかった。
あの時、生まれて初めて他人を欲しいと思った。それまでずっと一人で生きてきて、誰のことも必要だと思ったことはなかったのに。
「カイン……」
その名を口にするだけで血が沸き立つのを感じた。
術で操り、カインの心を意のままにしながら、身体の自由を奪い、彼の身体に触れながら、何度も何度もその名を呼んだ。

ファブールで、ローザを人質にとった時。
あの時は、カインが愛している女だとは知らなかった。
術で操っているカインの目が、それでもローザを追っていたのに気づいた時、胸の中に黒いものが渦巻いた。
「カイン、お前はローザを愛しているのか」
「……いえ、そんなことは……」
「セシルの女だぞ」
「……」
押し黙ったカインの様子に、ローザへの愛を感じ取って苦々しい気持ちになった。
「こっちへ来い、カイン――」
カインを呼び寄せ、抱きしめる。指にさらさらとこぼれる金色の髪。
「お前は俺のものだ――」
「……」
返事のない相手に、必死で愛の言葉を囁き続けた。届かないと知りながら。

ゾットの塔で、カインを置き去りにしてきた時。
「術が解けたか。きさまはもう用済みだ」
そう言い捨て、ゾットの塔にカインを置き去りにしたが、胸の内はとても平静ではいられなかった。
その後離れていた時間がどれほど長く感じたか。カインにかけていた術が解けたように見せかけているつもりが、カインのあの驚異的な精神力により本当に解けてしまうのではないかうのではないかと気が気でなかった。

封印の洞窟で、カインに呼びかけた時のこと。
「カイン……帰って来い、カイン……そのクリスタルを持ち、私の元へ……」
再び術がかかり、首尾よくクリスタルを持って戻ってきた従順なカインを出迎え、ゴルベーザは両腕を開いた。
「カイン……よく戻ってきたな……」
ゴルベーザは瞳を細め、両腕を開いて、人形のように物も言わずゴルベーザに促されるがままに抱き締められるカインに呟く。その耳朶に、頬に口づけて、唇を奪った。
「カイン……カイン……」
唇をほんの少し離して喘ぐように囁き、再び唇を重ねる。その無抵抗な歯を割って舌を絡めた。
――ている――。
ゴルベーザは、自分でも思ってもいなかったはずの言葉をいつのまにか心の中で何度も繰り返していた。
――い――している――カイン――。
「お前を……お前をずっと抱きたかった――カイン――お前がいない時が、俺にとってどれほど長かったことか――ああ――カイン――カイン――」
「俺を――俺を、愛してくれ―― カイン――!」
「はい、ゴルベーザ様――」
「いや、違う――そうではない――」
正気の彼には絶対に言ってもらえない言葉も、術で操っている状態ならいくらでも言わせることができる。まさに、人形のようなカインに。
虚しいのはわかっている。それでも、初めて彼の口から聞いた言葉だったのだ。

バブイルの巨人が倒され、自分も正気に戻った時のこと。
「お主! 自分が誰か分っておるのか!」
「……私は何故、あんなに憎しみに駆られていたのだろう……」
霧が晴れるように心を覆っていた憎しみが消えていく。重かった心から支えがとれ、渦巻いていた感情が一気に放出される。
胸のうちに残っているのは、カインへの思いだけだった。
よりによって、残っていても仕方が無いものがなぜ消えないのか。憎しみと一緒に、こんな感情も消えてしまうべきだったのに。
カインにかけられていた術は解け、ゴルベーザがあれほど欲しいと必死になっていた金色の獣は、ゴルベーザには一瞥もくれずにゴルベーザの傍から離れ、そして当然のようにセシルたちと合流した。

ゼムスを倒しながらも、その増大した悪意の塊となったゼロムスの前に力尽き、セシルにクリスタルを渡した時のこと。
「セシル……こ、これを……! お前が……使うのだ……!」
クリスタルは自分が持っていてもその輝きをすべて活かすことはできないのだと知った。
正しく強い弟。両親に愛された弟。カインの愛する女、ローザに愛される弟。そうされるに相応しい心を持った弟。
いや、そんなものは別にどうでもいい。
カインと共に時を過ごすセシルを、羨んだ。
憎しみは最早なく、肉親としての愛すら感じなくはないセシルを、それでも。

すべてが終わり、別れの言葉を告げた時のこと。
「いいのか? 行かせて……」
カインは、自分には全く関係のないことのような口ぶりでセシルにそう言った。
カインの中で、ゴルベーザに操られていた時のことはどうなっているのだろう。どうなっていたにしろ、良い思い出なはずはありはしないのだけれど。
ゴルベーザを、自分と同じように憎しみにとりつかれた哀れな人間だと思っているのかもしれない。それは本当だ。だが、カインを欲しいと思ったことだけは――


飛空挺は青き星に近づき、月からいよいよ遠ざかる。
ゴルベーザにとって青き星は、カインそのものだった。十数年の間、青き星の平和を祈りながら、カインのことを思っていた。
だが、カインはおそらくこの十数年、一度たりともゴルベーザのことを思い出すことはなかっただろう。
広い地上で、到底会えるとは思わないが、もし巡り合えたとして、顔をあわせてよいものか?
会ってどのように接すればよいのか?
自分の気持ちを抑えられるだろうか?

ゴルベーザは魔導船の中で、ただ一人の地上の民のことを考えていた。





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※当然ですが、FF4の公式(スクエア・エニックス)とは一切関係ありません。ファンが好き勝手なことを書いているファンサイトです。しかも腐女子向け。

※カップリングはゴルベーザ×カインです。
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