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「……ローザ……」
カインは呟く。
ローザの顔を見ると、自分が忘れかけている何かを思い出しそうな気がするのだ。
一体、何を忘れているというのだろう?
セシルはバロンの裏切り者。バロン王にあれだけ世話になっておきながら王に盾つこうとする、反逆者。
だから始末するのは当たり前なのに。何がこんなにも引っかかるのか?
「……カイン様、ゴルベーザ様がお呼びです」
ゴルベーザの近衛が部屋にやってくる。
おそらく、土のクリスタルについての話と今後の他国侵略に対する作戦の話だろう。
不思議なことに、ゴルベーザに呼ばれ話を済ませたのち翌朝目覚めるまでの記憶が、カインにはまったくない。
最初のうちはどうにか思い出そうと努力してみた。だがそれが無理だと知っている今となっては、気にしないようにと努めている。上役であるゴルベーザに対して失礼な言動をとっているのでなければ特に不都合なこともないだろうと思って自分を納得させているのだ。
簡単に身仕度をして、部屋を出る。ゴルベーザの元へ行く前に、ローザの顔を見てからにしようと思った。
カインはローザを愛している。ローザが愛しているのは、昔から一時も変わらずあのセシルなのだと、ずっと知ってはいるのだけれど。
*******
「遅かったな、カイン」
ゴルベーザの声が、胸の底を凍らせるように響く。カインの耳に響くゴルベーザの声は、いつもいつも冷たい。
「……いえ……」
カインは俯いた。
「ローザの様子を見に行っていたのか? ……だがあれは人質だ。あまり甘い顔を見せぬようにな」
「そんなつもりは……」
首を振ったが、偽りは隠せなかった。
「俺の目を見て答えてみろ、カイン!」
その声音は、まるでカインを責めてでもいるかのように厳しい。カインは訝しく、眉根を寄せた。
瞳。ゴルベーザの瞳。
すべての意志と記憶を奪う、ゴルベーザの瞳が、カインの心の奥に突き刺さる。最早抗う術も忘れ、心の扉はゴルベーザの前でたやすく開かれる。
「……お前は、まさか、あの女を愛しているのか……?」
尋ねられた言葉の前に自分を偽ることはできない。だがカインは渾身の力を込めて、ゆっくりと首を横に振った。
「ローザを、好きなのか……?」
もう一度、その問いに首を横に振るには、相当の精神力が必要だった。やっとのことで首を横に振ったまでは上出来だったが、しかし表情にまで気が回らず、カインは眉を寄せ、瞳を歪めてゴルベーザの瞳を見つめ返す。ゴルベーザはなぜか、苦しげに唇を噛み締めた。
「……あの女になら……素面のお前は、愛していると囁くのか……?」
動けない。
その場に立ち惚けているカインに歩み寄り、ゴルベーザは続ける。
「……俺はあの時、嫉妬に喘ぐお前の顔を初めて見た……」
あの時とは――ファブールでクリスタルを奪った時のことか。ローザと行動を共にしているセシルに、嫉妬の気持ちを抑えられなかった。
ゴルベーザはカインの顎を捕えて唇を強引に貪る。カインはそれに抵抗する精神も麻痺し、ただされるままになっていた。
「……俺のためには絶対にしない顔だったな……」
そう口にしてゴルベーザは、何を言っているんだ、というように自分を正した。
「否、……当然のことだが……」
ゴルベーザの唇が、再びカインの唇を捕え、その舌が歯を割ってカインの舌を味わいつつ、カインの胸元に滑り込ませた手がカインの乳首を弄ぶ。カインは我知らず、眉を歪めた。
「……お前の……顔……」
カインの瞳は、既に感覚器官ではない。ただのガラス玉でしかなかった。
カインには外界の状況は既に見えていなかった。ゴルベーザがどんな顔でカインに語りかけていたのかも――カインには、既に遠かった。
「……お前の……ここを弄られて喘ぐ顔も……絶頂を迎える時の顔も……俺は目にしたことがある。お前が……他の人間にはそう簡単に見せることのないだろう表情、淫らな表情、俺しか知らない、美しくて淫らな……お前の――。
……だが……お前は俺のためには決して――ローザの前でしたような表情をすることはない。お前は俺のためには――」
ゴルベーザの腕が、きつくきつくカインを掻き抱く。まるで――必死だ。
「俺はお前を決して自由にはさせない……お前は俺のものだ。……俺のものなんだ、カイン。だから……だからカイン……俺のものになれ」
支離滅裂な言葉をカインの耳元へ囁きかけ、ゴルベーザの黒い髪がカインの頸元へかかる。
「――い――している―― 」
ゴルベーザの唇から、言葉なのか、言葉でないのかわからないような声が漏れる。
言葉だとしても――聞く人もない言葉が。
*******
カインに思いを寄せる人間は、多い。
ゴルベーザには気に入らないことだらけだ。
大勢の人間の前で、カインが自分のものだということを見せつけなければならない。それに、ローザの前ではする表情をゴルベーザのためには決してしないカインに――それは不当な憤りなのだが、辱しめを与えなければ気がすまなかった。
大広間に50人の部隊長、副部隊長、近衛兵長たちが集まるその日の会議の最中、ゴルベーザは隣に座しているカインに意見を求めるふりをして、その瞳を真正面から見つめた。
「カイン、お前はどう思う? 土のクリスタルを手に入れるか――それとも、他国を傘下におさめることが先か」
ゴルベーザの魔の瞳は、カインの心を捕えて幾重にも縛る。更に、ありもしない頭痛が突然カインに襲いかかった。
「やはりトロイアに行くべきか――?」
「ゴ……ルベーザ……様……」
カインの唇がしどけなく開き、その眉が苦しげに寄る。あまりに妖艶なその表情に、集った一同全員の視線がカインに釘付けになった。
カインの美しい瞳に、唇に、誰もが息を飲んでいるのがわかる。ゴルベーザは冷ややかに笑った。
「ん……? どうした、カイン……」
「……ゴルベーザ……様……」
カインの腕が縋るように述べられる。ゴルベーザはその手を受け止めて立ち上がり、ゆっくりとカインを引き寄せた。
「ん……? 何だ、こんな所で……はしたない奴だな、カイン……」
そう言いながら、ゴルベーザの魔の瞳はますます怪しく光る。カインの頭痛はもっと激しくカインを責めた。
「……どうして欲しいんだ? ん? 抱いてほしいのか?」
カインの唇が乾く。カインは顫く顎をどうすることもできず、ただゴルベーザの腕に凭れるように倒れ込んだ。
「ほらカイン、皆見ているぞ。それなのにお前は……」
カインは頭の痛みを何とかしたい、ただそれだけだ。カインは熱に浮かされたようにはっきりしない頭で、ゴルベーザの口づけを受ける。
誰も、その光景から目を逸らすことはできなかった。
「皆の前で、俺に跪け。俺を欲しいと言ってみろ」
「ゴルベーザ……様……」
カインはゴルベーザの前に跪く。ぶるぶると震える手を伸ばしてゴルベーザに触れ、自分を穿つ凶器を露にしてためらうこともなく唇に含んだ。
「どうした? ……口も利けないくらいに俺が欲しいのか?」
カインは何かに急かされてでもいるように、首を縦に何度も振る。その虚ろな目が、ゴルベーザに焦点を合わせようと懸命になっている。
「……助けて……下さい、ゴルベーザ様……」
「フ……躾にだいぶ慣れたようだな……よし、むこうを向け、カイン」
カインはゴルベーザの言葉通りに、机に上体を凭せるようにしてゴルベーザに腰を突き出した。
「……フ……いい子だ、カイン……」
「ぅあっ!」
カインをその場で派手に犯し、ゴルベーザは口元に微笑を浮かべる。既にこの場は、会議場などではない。とてつもなく淫らで美しい、見世物を披露する場だった。
「ほら、皆見ているぞ。いつものようにちゃんと腰を使って……」
「ぁ……あ、あ……っ」
「……そうそう……どうした? もっと欲しいのか?」
ゴルベーザが声をかける度に、カインは悲痛な叫び声を上げる。
「あ……あ、あ、あっ……」
「そんなに気持ちいいのか、カイン……」
ゴルベーザの声も、抑えてはいるものの少し荒い。カインの耳元で息を吹き込む。
「お前は乳首も敏感だな……」
「あ、あぁ、あぁ……あ……ぁ……ぁ……」
「自分からそんなに腰を振って応えるとは……皆驚いているぞ」
ゴルベーザの言葉は、ますますカインの息を喘がせるだけだ。
「ぅあ、あっ、あぁ、あぁ、あぁっ……」
「……もっと欲しいのか? お前はこうされるのが好きだな……」
そう言いながら、ゴルベーザは瞳を曇らせる。カインの耳朶を唇に含み、諭すように囁いた。
「ただ……忘れるな。お前のその苦痛を癒すことができるのは、俺だけ、この俺だけなのだ。他の誰でもない……。他の誰にも、抱かれるな、カイン……」
ゴルベーザは激しく腰を動かし、カインに囁く声も掠れる。
「……他の誰にも……指ひとつ触れさせるな……」
カインの内股に指をくぐらせて、ゴルベーザは指を厭らしく蠢かせる。
「カイン……カイン……お前を抱くのは、俺だけだ……そうだな……?」
返事のないカインに、ゴルベーザは何度も何度も確認するように尋ねる。
「皆にもっとよく見せてやれ……お前が、俺にどんな顔で抱かれるのかを……」
「……う……ぁ、ぁ……っ!」
屠られる獣の放つ断末魔の叫びは、こんなにも甘美な響きを持っているのだろうか?
美しい、金色の髪の獣。
ゴルベーザは薄々気づいている。
操られ、抵抗できずに縛られているのが、既にカインの方ではないのだということに。
だがそれは、あってはならない。認めてはいけない。
だからゴルベーザはこうして、誰もの前でカインを抱く。
その行為は身体の快楽を求めるためのものだと、カインへの洗脳を容易にするためのものなのだと、自分自身に言い聞かせるために。
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渡辺諄子
性別:
女性
自己紹介:
※当然ですが、FF4の公式(スクエア・エニックス)とは一切関係ありません。ファンが好き勝手なことを書いているファンサイトです。しかも腐女子向け。
※カップリングはゴルベーザ×カインです。
※カップリングはゴルベーザ×カインです。