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LINEN渡辺諄子のFF4(ゴルカイ)妄想
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バロン城に顔を揃えた者たち全員で、謎の少女と、彼女が持ち去ったクリスタルについての意見を交わした。
すぐにでも月への道を開き、少女を追うべきだという意見と、その前に青き星であと少し準備を整えようという意見とがぶつかりあい、白熱したが、結局は準備不足だということで、しばし青き星で装備を整えることとなった。
カインは久しぶりにバロンで夜を過ごすことになったが、かつて自室だった竜騎士隊の部屋ももうない。ゲスト用の寝室を割り振られたが、どことなく居心地の悪さを感じ、どうしても寝付けなかった。
居心地の悪さは、罪の意識でもあったのかもしれない。
ローザに対する執着を表に出してしまったというのに、何事もなかったかのようにバロン城で客人扱いされていることがたまらなかった。
ベッドの上で何度か寝返りをうったが眠れず、カインは身を起こした。
冷たい夜の空気に触れれば、頭も冷えて少しは眠れるのではないかと思い、部屋の扉を開けて外へ出た。

長く続く石の廊下を歩き、階下へ降りる。階段を降り切ったところで、中庭で並んで月を見上げているセシルとローザの姿が目にとまった。夜の帳の中、すべて寝静まっているせいで、ぽつりぽつりと交わす二人の会話がそれでも耳に入った。
「……セシル、あなたが元に戻ってくれてよかった」
「心配かけてすまなかった」
「ううん、信じていたから。愛してる」
 ――仲のよろしいことで。
それは十年以上も前からもう何度も何度も見たような光景で、諦めなければならない思いだと承知しているとは言え、やはり苦いものを感じる。
このまま盗み見を続ける趣味は無い。その場を立ち去ろうとしたところで、視線のようなものを感じ、カインは振り向いた。
「何をしている」
低い静かな声に尋ねられた。バロン城の塔と塔とをつなぐ渡り廊下に男がいた。セシルに似た髪。力強い顔立ち。堂々とそびえる体躯。
「ゴルベーザ……」
カインはその前の男の名を唇の中で呟いた。ゴルベーザの目がカインを伺うようにじっと見ていた。カインは中庭に背を向け、男の側へ歩み寄った。
「いや――別に。お前はどうした」
「枕があわないためなのか、他の理由かはわからぬが、眠れない」
ああ、やはりこの男も同じだ。カインのように、バロンで過ごすことに罪の意識を感じているのかもしれない。
威圧されそうな力強い視線から逃れるようにカインは顔を逸らし、渡り廊下から外庭へ出た。ゴルベーザも共に来た。
「まだローザを愛しているのか」
もしかすると単純に尋ねているだけの言葉だったのかもしれないが、今のカインにとってはローザへの思いを断ち切れないことを責められているように感じられた。
「愚かだと思うか」
そう問い返すと、ゴルベーザは微かに笑った。月の光に照らされたその顔立ちは、無機質で驚くほど美しかった。
「俺が言えるような立場ではない」
「……どういうことだ。お前も同じような目にあっているというのか」
「ああ。俺も許されざる感情を抱いている。十年以上も」
思い返してみれば、ゴルベーザの部下として働いていた時間はそう短いものではなかったのに、そんな話はした記憶がなかった。友人ではないのだから当然といえば当然だが、一時はゴルベーザの腹心の部下として、昼も夜も片時も離れず共にいたはずなのだ。
他人の恋愛沙汰を詮索するつもりはないが、許されざる恋というところから、推理欲は沸き起こった。
相手は――月にはいないだろう。月にいる間は、フースーヤと二人だったはずだ。
リディアなら、当時はともかく今は既に大人の女性なのだし、年の差はあれど許されないというほどのこともなかろう。
ということは――
「ポロムか」
そう尋ねると、ゴルベーザは眉根を寄せ、片方の眉じりだけを上げた。
「違うのか。では、あの謎の少女か――」
もしそうなら、許されざる恋という言葉もしっくりくる。
だがゴルベーザの表情は変わらなかった。
「では、ローザか。その思いは報われんぞ」
「お前にそう言われると、わかってはいても苦しいものだな」
ゴルベーザは自嘲するように微笑んだ。
「遠くで思うだけなら、何も期待せずにいられたものを。これほど近くにいて、どうして抑えられるだろう」
ゴルベーザの手がカインの顔へ伸びた。避ける間もなく、頬に掌を添えられた。
「俺が愛しているのは、お前だ」
低い声が、耳の奥まで響いてきた。
「カイン、お前を愛している。俺はずっと――長い間ずっと」
ゴルベーザはそう口にすると、カインが振り払う前に頬に添えていた手を引き、カインの反応を待たず踵を返した。
カインはゴルベーザの言ったことが咄嗟には理解できず、その場に立ち竦んだまま、言われた言葉を頭の中で何度も繰り返していた。





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