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LINEN渡辺諄子のFF4(ゴルカイ)妄想
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ファブールで王に対面し、ヤンとセシルは必死に状況を説明した。バロンの暗黒騎士の姿であるセシルを疑う王にヤンはセシルの潔白を説明してくれ、ダムシアンの王子であるギルバートの顔も役だって、セシルたちはファブールの守りの最前線につくことになった。クリスタルを、命に変えても守り通すつもりだった。
ローザとリディアは救護班として別行動になり、セシルはヤンとギルバートと共に城の入り口で敵兵の襲撃を待つ。
やがて見張りの者が走ってきた。
「来たぞ、赤い翼だ!」
同時に空からの爆撃が城を揺るがす。怯んだ隙に攻め込まれた。
「突撃ー!」
その掛け声と共に敵の攻撃がセシルとギルバートを襲う。ヤンの蹴りが決まり、辛くも倒したものの、続々と攻め込んでくる敵兵を防ぎきれそうもない。
「ひとまず城内へ後退しますぞ!」
ヤンの言葉に、セシルとギルバートは従った。
城内に後退しても、戦局はひとつも芳しくならなかった。相手を倒すのが精一杯で、クルスタルへの道を守ることなどできない。セシルたちはじりじりと後退して、とうとう王の間までやってきた。
鍵をかけ、一息ついた時、共にここへ逃げ込んでいたモンク僧の一人がその鍵を開けた。
「何をする 」
声を上げて、ハッと気づく。
「……人間じゃ……ない!」
モンク僧だったはずのその姿が、魔物に豹変した。
「クリスタルを守らねば! クリスタルルームへ行きますぞ!」
ヤンの言葉に従って、階段を上ろうとしたその時、悲痛な叫び声が響いた。
「うわあ!」
ギルバートが敵の攻撃に倒されたのだ。ヤンも、そしてセシルも、即座に駆け寄り、ギルバートを庇う。
その場は凌いだものの、最早クリスタルを守るためというよりは、クリスタルルームへ追いつめられた状態で、セシルはクリスタルルームの扉を開いた。
クリスタルの輝きが満ちているその部屋。どんなことがあってもここへだけは、バロンの魔物の足を踏み入れさせるわけにはいかない。
階段をのぼってくる足音にセシルが身構えたその時。
誰のものだかすぐにわかる、否、間違えようのない凛とした声がセシルの身体を震わせた。「久しぶりだな」
間違うはずのないその人物を、あまりの信じられなさに、セシルは一瞬幻でも目にしているのではないかと疑う。
だが――それは、現実だった。
「――カイン! 無事だったのか!」
「ああ」
この声……ああ、全身の緊張がとける気がする。セシルはカインに駆け寄った。
だが、セシルにとっては死んでもいいほど嬉しかった再会だったのに、カインは……無表情な、虚ろな目をしていた。
「一緒に戦ってくれ!」
「無論そのつもりだ。だがセシル、戦うのは――」
カインの長い指がゆっくりと宙に上がる。
「お前とだ!」
カインの指先はセシルをまっすぐに指して止まった。
「カイン――」
セシルの混乱した頭が状況を把握するより早く、カインはスピアを構えて宙に跳ぶ。
「一騎討ちだ、セシル!」
「やめろ!」
「ゆくぞ!」
セシルの声など聞こえぬかのように、カインは冷淡な目をしてセシルを突き刺す。それはかつて一緒に剣の練習をした時の顔とはまったく違っていた。
セシルには……本気でカインに攻撃を仕掛けることなどできなかった。
防戦一方で、セシルは何とかカインの言葉を得ようとする。
「なぜだカイン!」
「問答無用!」
その冷たい目は、セシルに焦点を合わせて容赦なくスピアを振り下ろす。
「一体何があったんだ」
「煩い、黙れ!」
かつては互角に戦えていたはずのカインに、セシルはかけらの反撃もできなかった。
本当にできなかったわけではない。したくなかった。しなかったのだ。
倒れたセシルにカインはゆっくりと近づく。
「セシル、とどめだ」
その声が、低くセシルの耳に届く。
「まさかお前もゴルベーザに……」
ゴルベーザ。セシルの後任として赤い翼を率い、ダムシアンの城を滅ぼした男。話によると……何やら精神に訴えかける怪しげな術を使う……とか。それならば、カインも……
尋ねたセシルの言葉に、カインは答えなかった。
「今、楽にしてやろう」
そう言って、スピアを振り上げる。セシルは観念の眼を閉じた。
「そうはさせん!」
ヤンが叫んで止めに入ろうとする。
その時。
「やめてー!」
「ローザ!」
そうだ。いつもいつもローザなのだ。セシルはカインを見上げた。
まったく無表情だったカインの顔が、何かを突然思い出したように歪んだ。
――カインはやはり今も変わらずローザを愛している。
セシルは突き付けられたその事実に、声も出なかった。
おそらくゴルベーザに操られているのであろう今の状況で、セシルへの友情は消えても、ローザへの愛は尚カインを突き動かすのだ。ローザの前で、カインはこんなにも動揺し、顔を背ける。
「カイン、あなたまで!」
「……ううっ!――俺を……見るな!」
セシルに突き付けたスピアを持つ手が微かに震えている。その事実はセシルの心を引き裂いた。

「何を血迷っているのだ、カイン……」

静かな声が響く。
すべてのものを圧倒するような、静かで低い声。
ギルバートの唇が動いた。
「ゴルベーザ!」
その名に、セシルはピクリと反応する。
「貴様が……ゴルベーザ……」
床に腰を落としているために見上げているせいもあっただろうが、長身の堂々たる体躯を長いマントに包んだ姿に、敵ながら威厳のようなものすら感じた。
「お前がセシルか。会えたばかりで残念だが、これが私の挨拶だ……」
ゴルベーザの靴音が近づく。
「セシル!」
ギルバートの声が聞こえる。
「させるものか!」
ヤンが自分をゴルベーザから守ろうとしてくれているのもわかる。だが、セシルの身体は動かないのだった。
「虫ケラに用はない!」
ゴルベーザの静かな声が響いて、ヤンとギルバートが倒れたらしい声が聞こえた。
「カイン……遊びはその辺にしてクリスタルを手に入れるのだ」
「はっ!」
カインはゴルベーザの言葉に従順に頷く。
従順に。ひどく従順に。
「……カイン……」
届くはずのない人間。
セシルが触れることすら、思うことすら罪だと思っていたその人を、精神を支配するという、おそらくそれだけでこれほど自由にできるゴルベーザが、セシルには憎かった。
「やめてカイン!」
ローザは、彼に愛されている者の傲慢さで、クリスタルに手を伸ばそうとしたカインに叫ぶ。
――どうして、そんなことができるんだ。
セシルは初めて、ローザに怒りを感じた。
カインは自分を愛しているから、カインが自分を傷つけるはずなどないと、カインが自分の意志に反することをするはずがないと、どうしてこうも思い上がることができるのだ、ローザは。カインの気持ちに応えるつもりすらないくせに。どうして。
傲慢なローザ。
そして、カインのローザへの愛は、決してそんなローザの期待を裏切らない。ローザをどこまでも甘やかす、カインの無償の愛。
――なぜ、カインに触れようとすることができるんだ。愛してもいないくせに。なぜ、都合のよい時だけそうやって彼を利用しようとできるんだ。この僕の、カインに憧れて憧れてやまない僕の目の前で。
セシルは思わず、カインに近づこうとするローザに向かって命ずるように叫んでいた。
「下がるんだ、ローザ……!」
――カインに触れるな。
ゴルベーザは、そんなセシルの言葉の意味を違えて受け取った。
「ほう、そんなにこの女が大事か。ならばこの女は預かっていこう」
そう言って、ゴルベーザはいとも簡単にローザを片手で捕える。
「セシル、お前とは是非また会いたい。その約束の証しとしてな。……ゆくぞ、カイン!」カインはクリスタルを手に取り、悠々と立ち去ったゴルベーザの後に従う。
と、セシルの前で立ち止まった。
「命拾いしたな、セシル!」
そう言って、セシルに踵を向ける。
「ま……て!」
絞り出すような無様な声しか出なかった。声は、いつでもそうである通り、状況を少しも変えることはできなかった。
「くっ……」
セシルは唇を噛み締める。
倒れ伏している三人に、リディアが呪文を唱える。
「ケアル!」
「……うう……」
セシルは首を微かに左右に振って、上体を起こした。
「……クリスタルを奪われてしまった……」
「それに、ローザまで……」
自分たちの無力さに、セシルたちは顔を伏せる。
「それが何よ!――クリスタルなんて、また取り戻せばいいじゃない!――それに、ローザは無事よ!」
――それは――人質なのだから、ある程度は無事だろう。生娘のまま無事だという保障は、どこにもないけれど。
もしかして――カインが――ローザを抱くかもしれない。彼の気持ちは、誰よりもセシルが知っている。痛いほどに。だが、幼いが故のリディアのこんな楽天的なところが、セシルには羨ましくもあり、また可愛くもある。汚いことを何も知らない、何もわからないリディア。そのあどけなさ。ひたむきさ。
「……そうだね」
ギルバートが頷いた。
「……飛空艇さえあれば、何とか手の打ちようもあるのに……」
誰が言うともなしに呟いた言葉に、セシルは顔を上げる。
「バロンへ行くんだ! 飛空艇技師のシドは、僕の知り合いだ。きっと何とかしてくれる。そうだ、バロンの戦隊の主力は飛空部隊だ。海兵部隊は比較的手薄で……だから海から!」「そういうことなら、早速明朝王に船を用意して貰えるように頼みましょう」
ヤンが言う。セシルは新たな活路にすべての希望を託した。






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