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LINEN渡辺諄子のFF4(ゴルカイ)妄想
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カインがゴルベーザ四天王と呼ばれるゴルベーザの側近のうちの一人、風のバルバリシアに初めて対面した時、バルバリシアは妖艶な笑みを浮かべて「まあ、綺麗な顔をした坊やだこと」と言った。
それからしばらくの間はあまり話す機会もなかったが、カインの持ち場がローザの見張りになってからというもの、ゾットの塔で度々顔をあわせることになった。

「お前は、あの人質の女のことが好きなようね。もう抱いたの?」
バルバリシアには何の関係もないことだというのに、カインが一番触れられたくないと思っている場所にずけずけと踏み込んでくる。
カインは煩わしく思いながらも、バルバリシアの質問に答えた。
「……ローザには手を触れるなと、ゴルベーザ様のご命令だ」
ゴルベーザにそれを命じられた時のことは薄ぼんやりとしていて、いつどんな口調でそう言われたのかがよく思い出せないが、ゴルベーザがカインにそう命じたことだけは確かだった。
バルバリシアはそれを聞くと、口元に手をあてて笑った。
「おやおや。たとえゴルベーザ様のご命令があったとしても、あの女を抱いたところでゴルベーザ様にわかりはしないのに」
カインがもしローザを抱いたとして、バルバリシアに得も損もないというのに、なぜカインをけしかけようとしているのかはわからなかったが、単に面白がっているだけなのかもしれない。
「お前はあの女を自分のものにしないことで、何を得ようと思っているの? あの女を抱かなかったとしても、あの女がお前に感謝してお前を愛するようになることはないというのに。それならば、無理にでも抱いた方がまだマシだわ」
カインにローザを抱きたいと思う気持ちがないはずはない。だが敢えてそうしないのは、やはりローザに嫌われたくないからだ。
「お前の期待に添えなくて残念だが、ローザは簡単に汚してよい女ではないのだ」
カインの返事を聞くと、バルバリシアはまた面白そうに高笑いした。
「ならば、この私と寝てみるというのはどう?」
唐突な話だったので、カインは戸惑う。
「なぜ、お前と」
「お前が愛する女の世話をしながら、それでも苛々して仕方がないのは、誰かと抱き合っていないからよ。これほど若くて綺麗なお前が、一人寝ばかりでは、身体も心もおかしくなろうというもの」
「お前はどうなのだ」
尋ねると、バルバリシアは当然のように答えた。
「私は機会があれば誰とでもストレスを解消しているわ。ルビカンテとも。もう今はいないけれど、カイナッツォとも。スカルミリョーネとも」
「ゴルベーザ様とも?」
なぜ、咄嗟にその名前が口から出たのか自分でもわからなかったが、カインはバルバリシアにそう聞いた。
「ああ。お側についてすぐの頃はそういうこともあったような……」
ああ、やはり――
なぜなのかはわからぬまま、カインの胸の奥の奥が針で刺されたように一瞬痛んだ。
「そういえば、最近はお呼びがかかることもとんとないけれど。お忙しいようだからか、一体どうしていらっしゃるのやら」
「どうしているのか」というのはもちろん消息のことではなく、夜のことを指している。
ゾットの塔の自室へ戻った際にはカインに出迎えをさせるくらいだから、長らく女を抱いていないことは確かだが、ゴルベーザがどうしているのか、或いは何もしていないのかは、カインにはわかりかねた。
「お前はどうする? あの女に操をたてるつもりかしら? 叶わぬ思いのために。それとも私と寝てみる?」
おかしなことを言う女だ、と思ったが、しかし考えてみればバルバリシアは美人で色気もあり、身体つきも申し分ない上、後腐れもなさそうなところは魅力的だ。人間でなく、魔物だということを除けば。
対して、自らを振り返ってみれば、ローザがセシルを忘れてこちらを向いてくれない以上は、操をたてる相手もいなければ、誰と触れ合おうが誰を悲しませることもない身だ。
「……よかろう」
簡単にそうとだけ答えると、バルバリシアは可笑しそうに笑い、カインの首にするりと腕をまわして首筋に口付けた。長い爪で首にひっかき傷をつけられたが、痛みはなかった。


*************


赤き翼の羽音がしたかと思うと、着陸音が聞こえて、やがて外は無音になった。赤き翼がゾットの塔の傍に着陸したようだった。
ゴルベーザの靴音が静まり返った塔内に響き渡る。
『カイン、私の部屋へ来い――』
頭の中に直接訴えかけるようなゴルベーザの声に合図され、カインはゾットの塔の最上階へ向かった。
ゴルベーザの部屋の扉は開いており、部屋の中央には漆黒のマントをまとった銀色の髪の長身の男が立っていた。
カインは「失礼します」と声をかけ、室内に足を踏み入れた。
「こちらへ来い」
言われるままに、ゴルベーザの傍へ近寄る。マントを外そうとゴルベーザの肩に手をかけようとした時、黒いマントの中から伸びてきたゴルベーザの掌に顎をつかまれ、捻るように上へ向けられた。
「――」
ゴルベーザの動きがとまる。そのままの状態でカインはしばらくゴルベーザの視線を受けていたが、やがて突き放すように顎に添えられた手を離され、一瞬よろめきかけた。
「どうした、この首元の痣は……」
「いえ……」
ゴルベーザの腕が、今度はカインの首にかかる。そのまま後ろ頭と背中を壁につけるようにして押さえつけられた。
「……誰につけられたのだ?」
低く地を這うように響いてくる声は、怒りを抑えているようにも聞こえる。
「俺が赤き翼で世界を飛び回っている間、お前は何をして、誰にその痕をつけられたのだ――」
ゆっくりとした口調のゴルベーザの声音は、今度はあきらかに怒りの色を含んでいた。
なぜここまで激昂しているのかわからなかったが、とりあえず甘んじてその怒りを受け入れる。ゴルベーザはカインの首元に顔を寄せ、やがて首の爪痕を見て取ったらしく、呟くように低い声を出した。
「……なるほど、バルバリシアか――?」
動物の唸り声のような低音が響く。
ゴルベーザはバルバリシアを愛しているのだろうか?
もしもそうなら、誘われて応じただけとは言え、軽はずみなことをしてしまった。
不可思議な胸の痛みが、また一種カインの胸の奥で疼いた。
「か……勝手なことをし……申し訳ありません……」
ゴルベーザに首を掴まれ壁に押し付けられたまま、カインは絞められた獲物のようなみっともない掠れ声で謝った。
ゴルベーザはカインの声にはっとして手を離し、後ろ退さりながら離れた。
「いや――」
ゴルベーザは狼狽したように首を振る。
「お前が本心からしたくてそうしたのならば、俺が口出しすることはできぬのだ――」
カインに視線を置きながら、ゴルベーザのその目はもっと遠くを見ているような不思議な目つきだった。
「――わかった。今日はもうよい。下がれ……」
ゴルベーザは肩から力を抜きを、なぜかカインに背を向けた。
「お召し物は……」
「自分で外す。元より、そのくらいのことは一人でもできるのだ」
ゴルベーザはカインに背中を見せたままそう答えた。カインはゴルベーザに命じられるまま、部屋を出た。バルバリシアのことで傷つくゴルベーザを思うと、そしてあの男性らしい力強い美貌の上官を自分が傷つけてしまったことを思うと、胸苦しいような気持ちになった。


*************


ゴルベーザはそれからカインを自室に呼ぶことはなくなった。
それまで毎日、戻ってきては必ずカインを呼んで出迎えをさせ、装備を外させていたのだが、赤き翼の羽音が聞こえ、やがてそれがやんでも、カインに声がかかることはなかった。
出撃時に見送りをする際には、ゴルベーザはカインに必ず一瞥をくれる。その目は怒りでも憎しみでもない、何か締め付けられるような痛みを感じさせるものだった。
ゴルベーザは相変わらず、バブイルの塔を甦らせ月への道を開くため、世界中を飛び回っている。
カインはただ、ローザの世話をするばかりの日々だった。
愛する女の世話をする役目を与えてもらえているのだから、感謝すべきなのかもしれない。ただ、ゴルベーザの傍にいながらその役に立てないことは、辛くもあった。
ゴルベーザはバロンに来てすぐ、竜騎士隊の自分を取り立ててくれた大事な上官だ。恐ろしげな風貌に脅えを感じたこともあるが、その圧倒的な力と実行力に心惹かれる部分もあった。
呼ばれないとなると、寂しさばかりが感じられる。ゴルベーザの部屋で何をしたか、何を話したかなどろくに覚えてもいないというのに。

*************

赤き翼がゾットの塔へ戻ってきた。
塔内に響く靴音は、いつものゴルベーザのものよりやや重く、疲れた身体を引きずっているかのように感じられるほどゆっくりだった。
カインの部屋の手前で靴音は止まった。
部屋の扉を開けるべきかどうかカインが逡巡しているうちに、やがてゆっくりとした靴音がまた聞こえはじめ、一歩一歩カインの部屋の扉から遠ざかっていった。
「――」
カインはそっと扉に近づき、音をたてないようにしながら僅かに開いた。廊下には誰の姿もなかったが、ぽつりと赤い血が落ちていた。カインは廊下に出て、階段をのぼった。階段にもぽつりと血の滴が落ちていた。

階段をのぼりつめると、最上階にあるゴルベーザの部屋へたどり着いた。ゴルベーザの部屋の扉をノックしたが、返事はなかった。もう一度ノックし「失礼します」とノブに手をかけると、鍵はかかっていなかった。
壁に寄せられた黒い椅子に手だけかけるようにしてゴルベーザが蹲っていた。
「ゴルベーザ様!」
思わずかけよる。ゴルベーザの肩に手を触れると、ゴルベーザの身体が仰向けにがくりと倒れた。胸当ての下にゴルベーザ自身の手が添えられている。そこから、赤い液体がぽたりぽたりと滴っていた。
カインはゴルベーザの脇に腕を通してゴルベーザを担ぎ上げ、すぐそこにある大きなベッドに移した。壁際のサイドボードの中を探すと、ハイポーションと応急処置用のキットが見つかった。カインはそのふたつを手にしてサイドボードの扉を閉め、ベッドの脇に戻った。
ゴルベーザの身体から肩当て、胸当てを外して呼吸を楽にさせ、肘当て、手甲を取ってゴルベーザの手を握って、脇腹から離す。アルコールで傷口を消毒し、手に持っていたハイポーションをゴルベーザの傷口に注いだ。ガーゼで塞ぎ、包帯を上から巻く。しばらく待つと、苦痛に歪んでいたゴルベーザの顔は、穏やかな顔つきに変わっていった。
ゴルベーザの額に噴出していた汗を残ったガーゼで拭い、呼びかけた。
「ゴルベーザ様……」
「ああ――カイン」
ゴルベーザは掠れた声でカインの名を呼んだ。土気色だった顔色が、次第に色味を取り戻してきている。呼吸を整えようとするように少しずつ息を吐きだしながら、徐々に目を開けた。
「――俺を手当てしてくれたのか」
「は……」
カインは謹んで頭を下げた。部下として当然のことだ。ゴルベーザは身体を起こした。
「……失敗だった――次はないが」
自省するように呟いたが、その瞳には力強さが戻っており、声音にも普段の張りが感じられた。
「カイン……」
ゴルベーザの手が、感謝の意を示すにはいささか情熱的に思える力強さでカインの手を握った。
「お前を自由にさせてやりたいとも思ったが――」
ゴルベーザは囁くような微かな声で呟いた。
「俺はやはり――お前を……」

そこから先のことは――不思議なことに覚えていない。
目覚めると朝だった。
全身が気だるく、重かった。まるで誰かと愛し合った次の朝のように。





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