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ゴルベーザは赤き翼の甲板に立ち、クリスタルを手に封印の洞窟から戻ってきたカインを自ら出迎えた。
「よくぞ戻った、カイン……」
「はっ……」
カインはその場に跪き、ゴルベーザの前に最後の闇のクリスタルを恭しく掲げた。ゴルベーザはカインを見下ろした後、心持ち膝を折り、伸ばした左手でカインの肩に触れた。
「……よい」
カインは伏せていた顔を上げ、立ち上がった。カインの上向けたままの左手の掌にクリスタルが黒く澄んだ輝きを放っている。
「ゴルベーザ様、クリスタルを……」
「部屋で受け取る。ついてこい」
「はっ」
ゴルベーザはマントを翻して船内に戻り、デッキ最上階の自室の扉を開いた。セシルが赤き翼の隊長だった頃にはバロン国王を乗せる際にしか使われることのなかった広いキャビン内に、暗めの色調の絨毯が敷き詰められている。薄暗い照明を照らすと、ソファーとテーブルの側に置かれた小さなワインセラー、キッチンボード、サイドボードがぼんやりと浮かび上がった。部屋の隅の大きなベッドにかけられているシーツだけが、白く、くっきりと見える。
「失礼します」
少し遅れて入ってきたカインにゴルベーザは部屋の奥から声をかけた。
「ご苦労だった」
「はっ……」
「カイン。扉を閉めてこっちへ来い」
カインが言われるがまま部屋の扉を閉じ、ゴルベーザの側に歩み寄ってくる。頭を垂れて跪き、クリスタルを戴いたカインの手からクリスタルを受け取ったゴルベーザは、それを透明な箱の中に格納した。
「全てのクリスタルが揃った。これで月への道が開かれる――」
ゴルベーザは自分の両肩からマントを外し、放り上げた。漆黒のマントは大きく翻り、絨毯の上に落ちた。
「カイン、顔を上げろ」
跪いたままのカインが頭を上げた。ゴルベーザは身をかがめてカインの竜の兜に両手を添え、そっと外した。
薄暗い中でも輝きを放っているかのような美貌があらわれる。その瞳は愁いに満ちていた。その原因をゴルベーザは知っている。ゾットの塔でカインにかけていた術が解けたふりをして以来離れてはいても、カインの行動はずっと監視していた。カインがローザに胸の思いを打ち明けたことも知っている。
『許してくれ、ローザ……操られていたばかりじゃない。俺は、君に……側にいて欲しかったんだ』
そしてその思いを沈黙で拒絶されたことも。
哀れなカイン。だが届かぬ思いに心を支配されているという意味では、ゴルベーザと全く同じだとも言える。
「いい子だカイン。唇を開け」
ゴルベーザはカインの絹糸のような髪に指を通し、優しく撫でた。カインの瞳が、諦めのような色を映して閉じる。睫毛が頬の上に長い影を落とした。カインの薄い唇がゆっくりと開く。ゴルベーザは自らの着衣を掻き分けるようにして肌をあらわにし、カインの口元に押し付けた。帰艦してきた彼を出迎えた時から、抱きたいという欲望は募る一方だった。一刻も早くカインと肌を触れ合わせたい。だが、その思いをあらわにすることもまた、できない。
何度もしたことのある行為だからか、抗う気力もないのか、カインの唇は拒絶することもなくゴルベーザのそれを受け入れ、静かに舌を動かし始めた。ゴルベーザはカインの頭を掴んで深く、浅く突き入れる。喉の奥を突いたらしく、カインが呻いた。
ゴルベーザはカインの唇からずるりと抜き出すと、カインの肩を掴んで立ち上がらせた。美しく整った顔の顎を指で押し上げ、顔を寄せる。
カインと離れて過ごした時間は、ゴルベーザにとってあまりに長かった。
この唇に触れたかった。舌を絡ませながらカインの吐息を受け取り、その柔らかな口腔の粘膜を味わいたかった。
カインの唇に唇を押し付け、舌で歯列を割って深く触れた。一旦唇を離し、顔の角度を変えてもう一度触れた。
「――鎧を脱げ。俺の前で肌をさらすのだ」
「はい、ゴルベーザ様……」
カインは従順にうなずいてゴルベーザから離れ、自らの身に着けているものをひとつひとつ船室の床に落としていった。
「どうしたカイン。やけに聞き分けがいいな。ローザに受け入れられなかったのがそんなに辛かったのか。いつもは多少の抵抗を見せるお前が、甘んじて俺を受け入れるほど」
「いえ……そんなことは……」
カインは俯いたままかぶりを振る。ゴルベーザも着衣を脱ぎ捨て、部屋の隅のベッドに腰を下ろした。
「全部脱いだらこっちへ来い」
命じると、肌をあらわにしたカインがゆっくりと近づいてきた。ゴルベーザは両腕を開いてカインを抱き寄せ、金色の長い髪に触れる。三つ編みをほどき、指でそっと梳いた。ゴルベーザの元で朝を迎えた際には、この髪はゴルベーザがこの手で編んでいたものだったが、離れている間は一体誰が編んでいたのだろう。自分で編んだか。もしくはローザやセシルに――
言い知れぬ嫉妬が胸に沸き起こった。カインをシーツの上に押し倒すと、白いシーツの上にカインの金色の髪が広がった。再び唇を奪い、今度は指と掌を陶器のような肌に這わせる。脚の付け根に潜らせた指でそっとなぞると、ビクリと反応してカインは眉根を寄せた。カインの唇に唇を何度も押し付けながら、カインの下腹をまさぐる。優しい指つきで触れ、カインが充分に兆したところで、カインの手をとって自分の股間に導いた。
「自分で収めるんだ。できるだろう――」
「は……」
カインは手の中の熱く太い昂ぶりを擦りつつ身を起こし、仰向けの状態で待っているゴルベーザの両脚を跨いだ。足を開き、ゆっくりと腰を落として行く。ゴルベーザはカインの細い腰に手をあて、すぐにでも突き上げたい欲望を抑えながらカインの中にすべて収まる時を待った。
「ゴルベーザ様……」
途切れ途切れに吐息を漏らしながら、カインの濡れた唇が物言いたげに開いている。カインの温もりに最奥まで包まれたのを感じ、ゴルベーザは上体を起こしてカインの背に両腕を回した。瞼、頬に唇を寄せ、唇に触れる。何度も触れては離れ、触れては離れを繰り返すうち、次第に長く深い口づけに変わっていく。
「あっ――ゴ、ゴルベーザ様……」
カインが切なげに身を捩り、ゴルベーザの肩にしがみつくようにして顔を埋めた。
「お――お願いです――ゴルベーザ様――」
荒い息を肩口に感じる。金色の髪を撫で、シーツの上に仰向けに倒すとカインは喉の奥で小さく悲鳴のような声を上げた。
ゾットの塔で別れて以降しばらくぶりの触れ合いだったから、ゴルベーザにとっても長く楽しむ余裕などあるはずはなかった。ゴルベーザはカインの両脚の膝を折って脚を上向け、より深くカインの両脚の間に割り込んだ。
「あっ、あっ――ゴルベーザ様――」
奥へ突き入れると、カインの細い指がシーツを掴む。その手を握ってシーツから離すと、縋るようにゴルベーザの背に回った。
「カイン――」
胸の奥底から御し難い激しい感情が込み上げてくる。
――愛しい。たまらない。
「あっあ――ゴル――」
ゴルベーザはカインの唇を唇で塞ぎながら、浅く、深く腰を突き入れた。
「愛している――カイン、愛している――」
「あっ、ぅ――も――もう――」
カインが喉で押しつぶされるような苦しげな声を漏らした。ゴルベーザの背にかかっていた指に力がこもり、しなやかなカインの身体が強張る。ゴルベーザの腹に温かな迸りを感じた直後、ゴルベーザもわななき、カインの最奥めがけて何度も放った。
*************
「愛している――カイン」
形のよい耳朶に、噛み付くように唇を寄せて囁く。
「カイン、俺を愛していると言ってみろ」
「はい、ゴルベーザ様……」
術をかけ、心を操っている彼にその言葉を言わせることは容易い。それもローザへの愛に挫折し、半ば自暴自棄になっている今ならば、尚更。カインはゴルベーザが望めばその言葉を口にする。
「愛し……」
だが、言わせてどうなるものか。思ってもいない言葉を。ゴルベーザは呪文の詠唱を途中で遮るかのようにカインの言葉を遮った。
「よせ。もういい。言うな」
カインはゴルベーザを愛していない。承知している。もし、ローザがいなくとも、カインがゴルベーザを愛することはないだろう。ゴルベーザがカインに感じるように、カインがゴルベーザに独占欲を感じることも、ゴルベーザに接する人間に嫉妬を抱くこともない。
カインのいない間、ゴルベーザは部下につきあってバロンの城下町で買った女を抱いた。だが、もしカインがそれを知ったところで、おそらく何の感情も抱かないだろう。カインはゴルベーザのことで傷ついたりなどしない。わかりきっている事実にすぎないのに、そんなことが苦しくてたまらない。
「カイン、お前を愛している――」
「……」
「俺はお前だけが欲しい。愛している、カイン――」
カインの虚ろな目は何の反応も示さず、ただゴルベーザの影を写していた。
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渡辺諄子
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女性
自己紹介:
※当然ですが、FF4の公式(スクエア・エニックス)とは一切関係ありません。ファンが好き勝手なことを書いているファンサイトです。しかも腐女子向け。
※カップリングはゴルベーザ×カインです。
※カップリングはゴルベーザ×カインです。